高度専門職ポイント制2026-07-28監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

高度専門職ビザ「経営・管理」区分——駐在員と創業者の70点戦略

この記事の要点

「代表取締役なのに、なぜエンジニアより点数が低いんですか」——先日、日本法人の代表者として着任予定のある方から、真剣な顔でこう聞かれました。

0. 結論——経営・管理区分は「二重の網」を意識する

結論から先に言うと、これは区分ごとにポイント表そのものが違うからです。高度専門職ポイント制には「学術研究活動」「自然科学・人文科学の知識又は技術を要する活動」「経営・管理活動」という3つの区分があり、経営・管理区分だけ年収の配点の刻み方が大きく、同じ年収でも基礎点が伸びにくい設計になっています。さらに、経営・管理の在留資格そのものにも資本金500万円以上、または常勤職員2人以上という別建ての要件があり、HSPのポイントとこの要件は別物として二重に満たす必要があります。今日は、この「二重の網」をどう読み解けば良いのか、僕が実際に相談を受けてきた事例や、現場でよく起きるつまずきのパターンも交えながら整理していきます。

1. 高度専門職ポイント制の3区分——経営・管理はなぜ別扱いなのか

出入国在留管理庁の高度専門職ポイント制は、対象となる活動によって計算表が分かれています。研究者や大学教員が中心の「学術研究活動」、エンジニアや専門職が中心の「技術・人文知識活動」、そして会社の代表者・役員・起業家が対象の「経営・管理活動」です。学歴・職歴・年齢の考え方は共通していますが、年収の配点表だけは区分ごとに独立しており、経営・管理区分は他の2区分に比べて刻みが大きく設計されています。事業リスクを取る立場である以上、報酬の性質や決め方が技術者とは違う、という制度設計の思想が背景にあると僕は理解しています。以前、技術・人文知識区分から経営・管理区分に転じたある方が、「同じ年収なのに点数が下がった」と驚いて相談に来られたことがありました。区分をまたぐ転身を考える方は、まず年収の配点表そのものが別物であることを最初に押さえておくと、こうした戸惑いを避けられます。

区分主な対象年収配点の傾向
学術研究活動研究者・大学教員等年収より学歴・業績加点のウェイトが大きい
技術・人文知識活動エンジニア・専門職等年収配点の刻みが緩やかで加点が乗りやすい
経営・管理活動代表者・役員・起業家年収配点の刻みが大きく、高年収でないと点が伸びにくい

2. 経営・管理区分の基礎点——年収配点の癖を体感値で語る

年収は基本給に賞与等を加えた予定年収で計算するのが原則で、この点は他区分と変わりません。ただ、僕の体感値で言うと、技術・人文知識区分であれば年収600万円台からしっかり加点が乗ってくる方が多いのに対し、経営・管理区分では年収900万円を超えたあたりでようやく加点の恩恵を感じ始める、という肌感があります。あくまで現場で相談を受けてきた中での感覚値であり、公式な統計ではありませんが、経営・管理区分を検討する方には「年収だけで70点に届かせる」前提を持たない方がいい、とお伝えするようにしています。加えて、経営者としての実務経験年数も加点項目に入っているため、創業間もない起業家は職歴加点が薄くなりがちで、学歴や後述の特別加点で補う設計を考える必要が出てきます。実際に相談を受けた二人の例で言うと、海外本社から日本拠点の代表者として着任した40代のAさんは、経営経験の年数が長く職歴加点は厚い一方で予定年収が800万円台にとどまり基礎点が伸び悩みました。逆に自己資金でスタートアップを立ち上げた30代のBさんは、年収は高めに設定できたものの経営者としての実務経験がまだ浅く、職歴加点がほぼつきませんでした。同じ経営・管理区分でも、どこで点が伸び悩むかは経歴によって全く違う、という点は覚えておいて損はありません。

3. 見落とされがちな二重構造——在留資格「経営・管理」の資本金500万円要件

ここが今日いちばん伝えたいポイントです。仮にHSPのポイント計算で70点や80点に届いたとしても、それだけでは在留資格を得られません。在留資格「経営・管理」自体に、事業を営むための独立した事業所が確保されていること、資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること、又は常勤の職員が2人以上(代表者を除く)であること、事業の継続性・安定性が見込まれること、という要件が別建てで存在します。HSPはこの経営・管理の在留資格を前提としたうえで、追加のポイント表に基づく優遇を受ける仕組みなので、まず本体の経営・管理ビザの要件をクリアしていることが大前提になります。

実務の流れとしては、まず事業計画書の作成に2〜4週間程度、資本金の払込を終えて払込証明書等を取得するのに1週間前後、事業所となる物件の賃貸借契約締結に2〜3週間程度、という時間感覚を持っておくと準備が組み立てやすくなります。新設法人を自ら立ち上げる創業者は、自己資金で資本金500万円を用意するケースが多い一方、海外本社の日本拠点として着任する駐在員の場合は、本社の資本状況や日本拠点の職員数で要件を満たすケースがあります。資本金要件と職員数要件のどちらで攻めるかは、会社の形態によって最初から設計しておくべきだと僕は考えています。現場でよく見る失敗は、常勤職員の人数を数える際に代表者本人まで含めてカウントしてしまうケースです。要件上の「常勤職員2人以上」は代表者を除いた人数なので、名義だけの役員を並べても要件を満たしたことにはなりません。もう一つ多いのが、資本金の払込元が個人の借入金であるにもかかわらず出所を示す資料が不十分で、審査の過程で追加の説明資料を求められた例です。資本金の性質と出所を示す通帳履歴や契約書は、申請前に一式そろえておくことをおすすめします。

4. 特別加点で最後の一押しを作る——MBA・成長分野認定

基礎点だけでは70点、80点に届かないケースは珍しくありません。経営・管理区分の特別加点には、本邦の大学院で経営・管理に関する専門職学位(MBAやMOTなど)を取得している場合の加点、法務省が指定する成長分野の先端人材として認定を受けた場合の加点、日本語能力試験N1相当の能力を有する場合の加点などがあります。正確な配点は年度によって見直しが入ることがあるため、出入国在留管理庁が公表する最新のポイント計算表をそのつど確認するのが実務上安全です。以前、僕が相談を受けた創業社長の方は、基礎点が58点程度で70点に届かない状態でしたが、日本語能力試験N1相当の資格保持と本邦大学院でのMBA取得という2つの特別加点を積み上げて、無事に基準点へ到達することができました。あくまで一つの事例における目安値であり、点数の内訳は個々の経歴によって異なります。一方で失敗例として、MBAの学位証明書の日本語訳が正式な翻訳者名の記載を欠いていたために、証明資料の不備として一度差し戻しを受けた方もいました。特別加点は基礎点を補う強力な手段である一方、添付書類の形式不備で足止めされることも多いので、翻訳や証明書類は余裕を持って準備しておくことが大切です。

5. 現場でつまずくポイント——海外本社給与の合算と常勤職員の実態

年収ポイントの計算で「海外本社からの給与も含めていいか」という質問を本当によく受けます。原則は日本国内で行う活動に対する報酬が対象で、海外法人からの給与をそのまま合算できるとは限りません。実際に僕が見たケースでは、海外本社からの給与も含めて申告した結果、地方出入国在留管理局から説明を求められ、追加資料の提出が必要になったことがありました。報酬の支払い元と契約形態(出向契約なのか転籍なのか)を最初に整理しておき、出向契約書や報酬の支払い実態を示す資料をあらかじめ準備しておくと、審査でのやり取りがスムーズになります。もう一つよくあるつまずきが、常勤職員2人以上の要件を満たすために名目だけの雇用契約を結んでしまうケースです。申請時点では要件を満たしているように見えても、その後の在留期間更新の際に勤務実態が確認され、実質的な雇用ではないと指摘を受けた例を見たことがあります。給与の支払い記録やタイムカード等、実際に勤務している事実を示せる資料を日頃から整えておくことが、更新時のトラブルを避ける一番の近道だと僕は考えています。不安があれば、行政書士や管轄の地方出入国在留管理局に事前に確認しておくことを強くおすすめします。

(結論)

経営・管理区分でHSPを検討するときは、「HSPポイント」と「経営・管理ビザ本体の要件」という二重の網を常に意識してください。年収の配点は他区分より伸びにくいという前提を持ち、資本金500万円または常勤職員2人以上の要件は会社の形態に合わせて設計し、届かない分は特別加点で補う。そして、常勤職員のカウント方法や海外本社給与の合算可否といった実務の細部でつまずかないよう、書類は余裕を持って準備しておく。この流れを順番に押さえていけば、迷わず進めるはずです。皆さんいかがでしたでしょうか。経営・管理区分は情報が少なく不安になりがちですが、順序立てて整理すれば決して複雑な制度ではありません。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 経営・管理区分のポイント計算は他の区分と何が違うのですか?

学歴・職歴・年齢の項目は共通ですが、年収の配点刻みが技術・人文知識区分より大きく、同じ年収でも基礎点が伸びにくい傾向があります。出入国在留管理庁が区分ごとに公表するポイント計算表で必ず確認する必要があります。

Q. 高度専門職ポイントが70点に届かない場合、経営・管理ビザ自体は取れませんか?

取れます。在留資格「経営・管理」とHSPの経営・管理区分は別制度で、資本金500万円以上または常勤職員2人以上等の要件を満たせば、ポイントが70点未満でも通常の経営・管理ビザで在留は可能です。ただしHSP特有の優遇は使えません。

Q. 海外本社からの給与はHSPの年収ポイントに合算できますか?

原則は日本国内での活動に対する報酬が対象で、海外法人からの給与をそのまま合算できるとは限りません。現場では合算可否の解釈で追加資料を求められた例もあるため、事前に行政書士や地方出入国在留管理局に確認しておくのが安全です。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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