高度専門職ビザの実務2026-07-16監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

高度専門職ビザ保持者の転職——ポイント再計算と在留資格変更の実務

この記事の要点

「転職したらポイントが下がって、また70点を切ってしまうかもしれない」——先週、面談でお会いしたエンジニアの方からいただいた相談です。

結論から言うと、高度専門職ポイント制は転職したその瞬間に自動で再計算される制度ではないと僕は理解しています。ただし、在留期間の更新や在留資格の変更許可申請のタイミングでは、新しい職務内容や年収に基づいてポイントが見直される場面が出てきます。この「いつ見直されるのか」というタイミングの違いを正しく理解しておくことが、転職を安心して進めるための第一歩だと考えています。この記事では、転職時にポイント制がどう動くのか、在留資格変更許可申請が必要になるケース、転職前後の実務手順、よくある失敗とその対処、そしてポイント制保持者とJ-Skip保持者で転職の見え方がどう違うのかを、独自ガイドの目安値としてまとめます。

1. 転職はポイント制にどう影響するか——「再計算」という誤解と実態

まず整理したいのは、高度専門職ポイント制の70点・80点という基準がどのタイミングで問われるのか、という点です。ポイントは在留資格認定証明書交付申請や、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請といった、出入国在留管理庁への申請の際に算定される仕組みだと僕は理解しています。つまり、転職したその日に自動でポイントが再集計されて在留資格が失効する、という設計ではありません。日々の在留自体は、現在の在留資格が有効な限り継続します。

一方で、転職によって職務内容や年収、学歴の使い方(同一の学位を別の職務で使うかどうか)が変わった場合、次回の更新申請や変更申請の際には、新しい条件でポイントを算定し直す必要が出てきます。ここで70点を下回ってしまうと、高度専門職1号での在留継続が難しくなり、技術・人文知識・国際業務ビザなど別の在留資格への変更を検討する必要が出てくる可能性があります。僕の体感値で言うと、転職相談の中で最も見落とされがちなのが、このポイント再計算のタイミングを「転職直後」だと誤解してしまうケースです。実際には次回の申請までは現状の在留資格が有効なので、慌てて何かを申請する必要はありません。ただし転職を決める前に、新しい条件でのポイントを一度計算しておくことは、後々の安心材料になると考えています。

2. 在留資格変更許可申請が必要になるケース・不要なケース

転職に伴って必要な手続きは、活動の分野が変わるかどうかで大きく分かれます。同じ高度専門職1号ロ(技術・人文知識・国際業務に相当する活動)の枠内でIT企業からIT企業へ転職する、という場合は、在留資格変更許可申請が不要なケースが多いと考えています。一方で、研究職(1号イ)からエンジニア職(1号ロ)へ転職するなど、活動の類型自体が変わる場合は、在留資格変更許可申請が必要になります。

もう一つ実務上のポイントとして、就労資格証明書という制度があります。これは必須ではありませんが、転職先の企業に対して「この方は現在の在留資格でこの職務に就くことが認められている」ということを証明する書類で、転職先の人事担当者が安心して受け入れを進めるための材料になります。僕の体感では、外国人材の受け入れ経験がまだ浅い企業ほど、この証明書の提示を求める傾向があると感じています。転職活動が本格化する前に、現在の在留資格と新しい職務内容の関係を一度整理し、必要であれば就労資格証明書の取得も検討しておくと、選考の後半で足を止めずに済むと思います。

3. 転職前に確認すべき3つの論点——年収・職務内容・契約形態

転職を検討する際、僕が候補者の方に必ず確認していただくようお願いしている論点が3つあります。1つ目は年収です。ポイント制の中では年収に応じた加点項目があり、転職によって年収が下がると、次回更新時のポイントに影響が出る可能性があります。オファーレターの年収額だけでなく、固定給とインセンティブの比率まで確認しておくことをおすすめします。

2つ目は職務内容です。「エンジニア」という職種名は同じでも、実際の業務内容が学歴や職歴と結びついているかどうかが、ポイント制でも在留資格の適合性でも問われます。転職先の求人票に書かれている業務内容が、これまでの経歴とどう接続するのかを、自分の言葉で説明できる状態にしておくことが大切だと考えています。3つ目は契約形態です。正社員なのか、業務委託なのか、有期雇用なのかによって、在留資格の審査での見え方が変わってきます。特にスタートアップへの転職では、試用期間の位置づけや契約形態を事前に確認しておくと、後の手続きがスムーズになると僕は感じています。

4. 実務手順——転職からビザ切替までのタイムライン

ここからは、今日から使える実務手順として、転職の意思決定からビザ関連の手続きが落ち着くまでの一般的な流れを整理します。独自ガイドの目安値として、以下のような順番で進めると安全性が高いと考えています。

フェーズやること目安のタイミング
1. 検討開始現在のポイントと新条件でのポイントを両方計算する転職活動開始時
2. 内定後職務内容・年収・契約形態をオファーレターで確認する内定受領直後
3. 手続き判断活動分野が変わるか確認し、必要なら変更許可申請を準備する内定後〜退職前
4. 退職在職中の在留資格が有効な間に退職手続きを進める内定確定後
5. 入社後就労資格証明書の取得や次回更新に向けた資料を整理する入社後1〜3ヶ月

この中で特に重要だと僕が考えているのは、フェーズ1です。転職活動を始める前、あるいは始めた直後に、新しい条件で仮のポイントを計算しておくことで、「この求人は受けても大丈夫か」という判断がぶれなくなります。逆に内定が出てから慌てて計算すると、条件面での交渉余地がすでに狭まっていることが多いというのが、僕の体感値です。

5. よくある失敗と対処——「先に退職してしまった」「業務内容を証明できない」

ここでは、実際に相談の中で見聞きした失敗パターンと、その対処法を紹介します。1つ目は「転職先が決まる前に、現職を先に退職してしまった」というケースです。在職中の在留資格は現在の職務を前提に許可されているため、無職の期間が生じると在留資格の基盤が一時的に不安定になります。対処としては、内定と職務内容の確定を終えてから退職手続きに進む順番を守ることを、独自ガイドの目安として強くおすすめしています。

2つ目は「転職先の求人票の業務内容が抽象的で、これまでの学歴・職歴との接続が説明しづらい」というケースです。特にスタートアップやベンチャー企業では、職務記述書が簡潔にまとめられている分、審査の際に業務内容の具体性が問われることがあります。対処としては、面接の段階で「入社後、具体的にどのようなタスクを担当するのか」を担当者に確認し、その内容を自分の言葉で説明できるようにメモしておくことが有効だと考えています。3つ目は「転職先の人事担当者が高度専門職ビザの実務に不慣れで、就労資格証明書の取得に時間がかかった」というケースです。これは候補者側だけの問題ではありませんが、事前に「必要であれば就労資格証明書を取得しますが、通常どの程度の期間を想定していますか」と早めに話を通しておくことで、入社日のずれを防げると思います。

6. ケース比較——ポイント制保持者とJ-Skip保持者、転職時の違い

最後に、高度専門職ポイント制の枠組みで在留している方と、J-Skip特別高度人材制度で在留している方とで、転職時の見え方がどう違うのかを整理します。

観点ポイント制保持者J-Skip保持者
次回更新時の確認事項新条件での70点・80点の再計算が必要学歴・職歴・年収の基準を満たしているかの再確認が中心
転職による年収低下の影響ポイント低下につながる可能性がある基準年収を下回ると資格そのものの前提が揺らぐ可能性がある
転職先選定での自由度加点項目を組み合わせる分、条件の幅が広い年収基準が明確な分、判断はシンプルだが基準を割れない緊張感がある

この比較から言えるのは、どちらの制度でも「転職によって条件が変わる」というリスクそのものは共通しているということです。ポイント制のほうが加点項目の組み合わせによる調整の余地がある一方で、J-Skipは年収という一つの明確な基準が前提になっている分、転職先の年収レンジを事前に確認する重要性がより高いと僕は考えています。どちらの制度で在留している方も、転職を検討する段階で「今の在留資格の前提が、転職後もどう維持されるか」を一度立ち止まって確認する姿勢は変わらないと思います。

0. 結論——転職の順番を守れば、ポイント制は敵ではない

高度専門職ポイント制は、転職したその瞬間に自分を追い詰める制度ではありません。ポイントが問われるのは在留資格変更や在留期間更新のタイミングであり、そこまでの間に、新しい条件での仮計算、活動分野の変化の確認、就労資格証明書の取得検討といった準備を積み重ねておけば、転職はそれほど怖いものではないと僕は感じています。大切なのは、内定が出てから慌てて手続きを考えるのではなく、転職活動を始める段階から、現在の在留資格と新しい職務の関係を意識しておくことです。皆さんいかがでしたでしょうか。ご自身の状況に当てはめて判断が難しい部分があれば、一人で抱え込まずに専門家へ相談していただければと思います。それでは今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 高度専門職ビザで転職したら、ポイントはすぐに再計算されますか

すぐには再計算されません。ポイントは在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請といった、出入国在留管理庁への申請のタイミングで見直される仕組みだと僕は理解しています。転職した当日にポイントが下がって在留資格が失効する、という制度設計ではありません。ただし転職後に年収や職務内容が変わった場合、次回の更新時に基準を満たすか確認が必要になるため、転職前に新しい条件でポイントを再計算しておくことをおすすめします。

Q. 同じ高度専門職1号でも転職のたびに在留資格変更許可申請は必要ですか

活動の分野が変わらない転職であれば、在留資格変更許可申請が不要なケースも多いと考えています。一方で、イ(研究)からロ(技術)への変更のように活動の類型自体が変わる転職では、変更許可申請が必要になります。判断に迷う場合は、就労資格証明書を取得して転職先に提示すると、双方が安心して手続きを進められると僕は感じています。

Q. 転職前に退職してしまうと在留資格に影響しますか

影響する可能性があると僕は考えています。在職中の在留資格は現在の職務に基づいて許可されているため、退職して無職期間が生じると、在留資格の基盤が一時的に不安定になります。独自ガイドの目安としては、内定と職務内容の確定を終えてから退職手続きに進む順番のほうが、在留資格の説明がしやすく安全性が高いと感じています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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